忍野村
(忍野八海、見所)

●忍野八海(忍草)
富士山の伏流水の湧(ゆう)水口の一つで国天然記念物。全国名水100選でもある。かつては宇津湖(忍野湖)という湖だったが、湧水口のみが池として残ったと考えられている。富士山の雪溶け水が地下の溶岩のすき間を通って数十年から100年もの歳月をかけて再び地表にわき出すといわれ、8つの池は「神の池」としてそれぞれに伝説が残っている。
  1. 出口池
    面積は1467.7平方mで八海中最大。湧水量が減り枯渇していたが、最近になって再び水が戻ってきた。別名精進池。「清浄な霊水」と呼ばれ、富士登山をする行者や道者はこの水で汚れを払い登山したと伝わる。
  2. お釜池
    24平方mで、八海中最も小さいが底は深い。昔池のほとりに住む娘が洗濯中、1匹の大ガエルに水中に引き込まれ行方不明となり、父と姉は池のほとりに住み娘のめい福を祈ったという。
  3. 底抜池
    208平方mで、周辺にはモミの木などが茂る。池で洗い物をすると野菜や器が池に引きずり込まれ、池の底の穴を通ってお釜池に浮かぶといわれ、神様が池での洗い物を嫌っていると伝わる。
  4. 湧池
    152平方m。溶岩が露出した底に湧水に揺れる藻(も)などの水草が見られる。昔、富士山噴火の熱に苦しみ水を求めた人々の声が天地に広がると「私を信じ永久に敬うならば水を与えよう」という木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)の声が聞こえ、溶岩の間からわき水が出て池になったという。
  5. 銚子(ちょうし)池
    79平方mで、池の形が銚子に似ている。昔、ある花嫁が祝言の席上のそそうを恥じ、銚子を抱いて池に身を投げて以来、池の底に美しい女性の姿が映るようになったという。縁結びの池ともいわれる。
  6. 濁池
    36平方mで川に隣接。元は澄んだ水だったが、みすぼらしい行者がこの地の地主に1杯の水を求めたが断られ、以来池の水は濁ってしまったと伝わる。
  7. 鏡池
    144平方mで、水面に逆さ富士の姿が映ることからこの名が付いた。池の水は善悪を見分けると伝えられ、争いごとがあると、これを治めるために当事者双方が水を浴びて身を清め祈願したといわれる。
  8. 菖蒲(しょうぶ)池
    281平方mだが、沼地化している。重い肺病の夫を助けるため妻が池の水を浴びて身を清め祈ると「池の菖蒲を夫の身に巻きなさい」とお告げがあり、夫が全快したという。
  9. 忍草浅間神社・イチイの群集(忍草)
    祭神の木花咲耶姫命などの3神像はいずれもヒノキの1本作り。県内最古の神像で県文化財。境内には社殿や仁王門を取り囲むようにイチイが群生。高さ20mに及ぶものもある。17本が県天然記念物に指定されている。
  10. 忍草のツルマサキ(忍草)
    茎から気根を出し他の木や岩をはい登るツルマサキ。巨木で樹型が美しく珍しいことから県天然記念物に指定されている。